翻訳や監訳をする理由について、記したいと思います。もっと言えば、記事執筆も同様ではありますが、今回はあえて、翻訳を中心に監訳についても触れていきます。
翻訳の動機
翻訳にあたっては、まず当然ながら、著者の許諾を得ます。これは大前提です。幸いなことに、日本語への翻訳の許諾においてお断りされたことはありません。どんなコミュニケーションをすれば、翻訳の意図や思い、どうやって翻訳し、どのような形態で公開するかを伝えられるかについては、興味のある方が多ければまた記したいと思います(フィードバックください)。
さて、翻訳の動機については、何回かコミュニティイベントで語ったことがあります。翻訳のモチベーションは以下の順になります:
- 著者に貢献したい
- 日本の実践者に貢献したい
まず第一のモチベションは、「著者に貢献したい」です。有益な記事を惜しみなく公開してくれている著者への尊敬と感謝の気持ちです。著者は多くの方に自分の経験や知見、意見を公開してくれています。しかしながら、英語(※今のところオリジナルが英語の記事しか翻訳していません)だというだけで日本人には読まれない(≒認知されない)ことがままあります。これは英語が得意ではない私自身も例外ではないので実感としてもさもありなんなのです。私は、著者の記事をより多くの方に触れる機会を作ることで著者に貢献したいと願っています。その手段が「翻訳」なのです。
翻訳の質と目的
さて、そうなると、次に重要になってくるのは、「翻訳の質」です。残念ながら、私の英語力では、限界があります。また、十分な時間を確保しているかというとそうでもない面もあります。
これには、一定のスタンスと覚悟が内包されています。先に述べたように、私は、「著者の記事を広める」という貢献をしたいのです。したがって、私による翻訳はそのきっかけになっていればよいと考えています。翻訳記事には、必ず著者名と元記事へのリンクをつけています。これはお作法としての意味合いもありますが、なにより、「最終的にはオリジナルの記事を見に行ってほしい」という思いがあるのです。日本語で、存在を知り、詳細はオリジナルに当たってほしいのです。
そんな思いもあるため、翻訳の質はある程度、自分の能力以上に高める気はありません。訳が変だと思ったら、フィードバックいただけると大変助かりますが、面倒だったらオリジナルを当たってください。
翻訳の質の捉え方
私は、書籍、ホワイドペーパー、Web記事で翻訳の質についての捉え方がだいぶ異なっています。重要なのは、先に述べたように「オリジナルに当たれるか」だと思っています。
Web記事の翻訳
Web記事は、オリジナル記事が消去されない限りは、誰でもみることができます。したがって、翻訳が怪しければオリジナルを見ればいいことになります。
ホワイトペーパーやガイドの翻訳
ホワイトペーパーやガイドのほとんどは、PDFでダウンロード可能なものとなっています。したがって、オリジナル版のPDFもダウンロードは実質的には可能です。しかしながら、ダウンロードという性質上、翻訳したものだけが一人歩きする傾向があります。したがって、ホワイトペーパーやガイドについては、翻訳の質を高めておく必要があります。そのため、チームを組んで翻訳にあたります。共同翻訳や、翻訳レビューを必ず入れる形です。
現在も2つの有益なガイドとホワイトペーパーについて共同翻訳、翻訳レビューをお願いしています。そのうち公開されると思いますので、楽しみにお待ちいただければと思います。
ちなみに、翻訳レビューは、一般公募を中心にしたいと思っており、SNSで募っていますので、興味のある方は、@tnagasawa で募った際に反応してください。やりたい方に機会を提供したいため、名乗りを上げてくださった方の30〜60%の方々(5〜8名)にお願いすることが多いです。
書籍の翻訳・監訳
書籍は有償であるため、日本語版単体で質の高いものになっている必要があります。日本語版と併せて、英語オリジナルの書籍も購入する人は少ないでしょう。したがって、ガイドやホワイトペーパーより質を高めておく必要があります。「翻訳が怪しかったら英語オリジナルも読んでね」とは言えないわけです。誤った翻訳は、それが著者の意見として誤って伝わってしまうので重大です。
まとめ
私は、著者への感謝と尊敬をモチベーションに翻訳をしています。最終的には、オリジナルにたどり着けるものはそこに行き着いてほしいという思いがあり、翻訳の質を調整(開き直り)しています。
本記事の執筆者:
長沢 智治 - アジャイルストラテジスト
サーバントワークス株式会社 代表取締役。Helpfeel Inc. アドバイザリーボード。DASA アンバサダー/認定トレーナー。
『More Effective Agile』、『Adaptive Code』、『今すぐ実践!カンバンによるアジャイルプロジェクトマネジメント』、『アジャイルソフトウェアエンジアリング』など監訳書多数。『Keynoteで魅せる「伝わる」プレゼンテーションテクニック』著者。
Regional Scrum Gathering Tokyo 2017, DevOpsDays Tokyo 2017, Developers Summit 2013 summer 基調講演。スクー講師。