再掲載

本記事は、2017年4月に掲載した記事を再掲載したものとなります。

エバンジェリスト

さて、そもそも皆さんは(皆さんの周りの人は)、「エバンジェリスト」という書かれた名刺をもらったらどう思うのでしょうか?いくかのアンケート結果がでているように、その実態も、指しているものも様々ですね。

エバンジェリストって何してる人? よくわからない肩書き20 | cnet Japan

「どういうポジションの人かよくわからない肩書き」堂々の第1位ですから仕方がありません。一般的にエバンジェリストとは「人」を指していることは容易に想像できるところですね。他の肩書きも一緒ですので。

「エバンジェリスト」といっても人が責任を持って活動していることであり、会社の代表として活動していることはずれていないと思いますが、それ以外は人故に、人によって異なり、それが良さにも悪さにもなると思っています。

興味のある方は、クローズドな場でしたらお話しをいたします。

エバンジェリストとしての矜持

エバンジェリストは、人であり、人に支えられ、人による
長沢智治の「エバンジェリスト講演資料」からの引用

最近では、プリセールス職も広報も「エバンジェリスト」と呼ぶようですので、その範囲はもう私でも想像の範囲をゆうに超えております。そうであってもなくても、私は、「人(柄)」が先に立つ難しい役割・職業だと思って10年以上活動しているわけです。なので、他の人の活動について何かいうことはありません。

「エバンジェリストとはこういう活動としてこういう言動をしなければならない」としてしまうならば、それはきっと人ではなく、マーケティング施策やプログラムでできてしまうことだと思っているからです。

人である以上、ミスや間違いもします。だから謝る勇気、訂正する勇気と覚悟は常に持っていなければならないと思っています。

エバンジェリストの資質
長沢智治の「エバンジェリスト講演資料」からの引用

また、私はエバンジェリストであろうとなかろうと、「すべての可能性を排除せず」行動しようと考えています。もちろん、制約や困難もあります。意見も異なります。それでも自分の意見だけを是として活動するのではなく、いろいろな選択肢があること、いろいろな考えがあることを共有して、皆さんの『現場』でどうするか、どう思うか行動に起こしてもらえるようにになったらいいなと思っています。

私にとってエバンジェリストとは、「マーケット(市場)を創る人」の一員です。これは人でなければできないことだと思っています。それと同じかそれ以上に、「エバンジェリストだけでできることではない」と思っています。したがってエバジェリストはきっかけであったり、呼びかけであったりをする「触媒」だと認識しています。

エバンジェリストが道を切り拓く、マーケティングが道幅を広げる
長沢智治の「エバンジェリスト講演資料」からの引用

「コミュニティが大切」です。書いてしまうと表現が軽くなってしまうのですが、10年以上の活動を見てもコミュニティに支えられているからこそできるお仕事だと思っています。例えば会社と対立したとしても曲げてはならないこと、やならなければいけないことがあるのもエバンジェリストだと思って活動していますが、社内から何度も背中を刺されるようなことがあっても踏ん張ることができたのはコミュニティのおかげ以外のナニモノでもありません。「会社か。コミュニティか」と二者択一の選択を迫られたならば、コミュニティを選びます。その覚悟でやっていますので、その状況になってしまったならばその会社を去ることを検討しなければなりません。それくらいで考えています。

よくエバンジェリストの評価基準とか、どうやったらエバンジェリストになれるのか、と聞かれます(この投稿の動機も実はよく聞かれるからなのです)。ここで文字で書いてしまうと誤解をうむことになるので、本当に聞きたい方は、個別に聞いてください。私個人としては、以下の指針で活動しています(白字よりも黄色い字を意識していますという見方をしてみてください)。

エバンジェリストの成果指標(KPI)
長沢智治の「エバンジェリスト講演資料」からの引用

これが私の行動規範でもあり、自分の中での評価基準でもあります。容易い目標設定はしません。それはある意味自由であり、裁量を任されているエバンジェリストだからこそな部分があると思っています。人でなければできない仕事だから人の弱さも抱え込みます。適当にやろうと思えばできますし、怠けようと思うこともできてしまうのでセルフマネージメントできない人は向いていないかもしれません。

繰り返しますが、人は弱いので「仲間」が必要なのです。外に出て行く仕事であり、会社と対立してしまうこともあるので、比較的社内より社外に理解者が多くなる傾向もあるのかなと思っています。話がそれてきてしまいましたが、高い目標設定と評価基準をもっていれば会社の評価基準は自ずと超えることになりますので生きていけるとも言えます。

不思議といろいろな縁が繋がり、年に数回の「よい知らせ」の連鎖がおきるのもこのお仕事の醍醐味かもしれません。ただしそれは計画してできることでも、意図的に作り上げられるものでもありません。「縁」と言えばそれまでですが、自分との繋がりだけでなく、関わった方々の繋がりの連鎖が成果につながります。その点でも難しい職業ではあります。

それから常に意識しているのは、これです。

伝えるvs行動してもらう
長沢智治の「エバンジェリスト講演資料」からの引用

「伝える」を重視するのではなく、「行動してもらう」を大切にして活動しています。これはプレゼンテーション講座をするときにも言及しています。

その場だけ満足いただくことは決して難しいことではないと思っています(そりゃもちろん難しいのですが)。その場の講演で「わーすごい」と思ってもらえたとしても帰りの電車の中で「で、あれって結局なんだったんだ?」と思われてしまったり、現場に戻った時に「あー面白い講演だったよ、えーっと中身は。。。なんだっけな。とにかくよかったよ」ではダメだと思っています。それならばむしろ、「あいつの言っていることは違うと思う。ウチらのことはウチらで」「すこし雲を掴むはなしだったけど、いつか役に立つ時があるのかもな。そうだ現場のあの人ならもっと詳しそうだ」と思って行動に起こしてもらえる方が、私としては嬉しいのです。

半年後、1年後、5年後に、「あの時意味わからなかったけど、やっとわかった。自分たちにとって今必要な講演でした」といってもらえるとことがよくあります。これはとっても嬉しい出来事です(もっとはやく気づけるような講演ができるならもっといいのはわかっていますが、すみませんそこまで上手く表現できていません)。

私は、講演の前や後に、「ここでのお話しはどうか疑ってかかってください。現場の解は現場にしかありませんので」とよく言います。これが本心であります。しょせんは一人の人間ですので、すべてわかるわけではありませんし、皆さんの現場のことを皆さん以上に知ってるなんてことはありえません。それを自覚した上で、活動したいと思っています。

エバンジェリストがやること、やらないこと
長沢智治の「エバンジェリスト講演資料」からの引用

これはコンサルタントをしていた時からの信条でもありますが、「お客様の本業に踏み込まない」は貫いています。お手伝いできることは最大限ですが、「現場のことは現場が一番よく知っている」です。

現場のチカラを信じられないならばエバンジェリストなんてやっていられません。だったらコンサルタントとして契約した現場に全力投球したいところです。

私は、すべて「受け手次第」だと思っています。どう感じてどう行動してもらうかは、講演にせよ、ブログ投稿にせよ、それを受けた人次第だということです。

なので、内容にも、それを聴いた人、読んだ人の心や行動についてもいろいろと考えながらやっています。ただし、これらは「受け手」を信じていないとできないことだと思っています。私は皆さんを信じています。だから皆さんにも私を信じてとは言いません。私の発信なんて参考程度です。皆さんは現場を信じてください。

エバンジェリストに物語はありません。
物語はあなたの現場にあります。現場の物語を大切にしてください。

本記事の執筆者:

長沢智治

長沢 智治 - アジャイルストラテジスト

サーバントワークス株式会社 代表取締役。Helpfeel Inc. アドバイザリーボード。DASA アンバサダー/認定トレーナー。

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認定スクラムマスター
DASA Accredited DevOps Trainer

『More Effective Agile』、『Adaptive Code』、『今すぐ実践!カンバンによるアジャイルプロジェクトマネジメント』、『アジャイルソフトウェアエンジアリング』など監訳書多数。『Keynoteで魅せる「伝わる」プレゼンテーションテクニック』著者。

Regional Scrum Gathering Tokyo 2017, DevOpsDays Tokyo 2017, Developers Summit 2013 summer 基調講演。スクー講師。

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