この記事は、Julee Everett さんと Ryan Ripley さんによる「3 Tips & 8 Seconds that Change the Emotional Climate of your Team」の翻訳です。翻訳にあたって、Julee さんの承諾をいただいております。誤字脱字、誤訳がありましたらご指摘の協力をお願いいたします。
はじめに
スクラムマスターは、自問自答してみてください。
あなたは、無理をしていないサーバントリーダーなのでしょうか?
それとも、パフォーマンスの高いチームを生み出すような鼓舞するコーチになるのに苦労しているのでしょうか?
あなたが本当に変化を起こしたいと思っていて、いくつかの厳しい内省を準備できている場合は、この記事はあなたにインスピレーションを与え、自分で制御できるところから始め、大きな変化に影響を与えることができることがわかるでしょう。
自分の振る舞いが他の人たちにどのような影響を与えているかに着目することで、チーム内の感情的な雰囲気(感情風土)を変えることができます。また、自分のキャリアにもプラスの影響があるかもしれません。あなたのチームの問題のほとんどすべてがプロダクトオーナーの問題だと思っている場合は、「プロダクトオーナーとしてEQを高める5つのヒント」をご覧ください。
以下は、EQ (Emotional Intelligence, 感情知性) のスピーカー、トレーナーである Scott Watson の仕事からヒントを得ています。あなたがすでにうまくいっていることを補完し、自身の EQ を高め、チーム内の感情風土を改善するための戦術のプランを立てる手助けになることを願っています。
1. 医者の不養生
自らを養生する方法を教える
リーダーである以上は、自分自身の感情的な不安を少しでも克服し、たとえ衝突を避ける性格であったとしても、声を上げなければなりません。それは他の人たちに立ち向かうことではありません。自身の声を見つけることなのです。自身を弁護できないならば、どうやってチームを守ることができるのでしょうか?
感情的な自分に戻るための簡単な方法は、定期的に発生する特に不快なシナリオの記憶を何回再実行しているのかを追跡することです。
例えば、あなたの友人やチームメイトの中には、常に予定してあったミーティングにいつも遅れてきたり、時間に間に合わせるために、あなたや他のチームメイトの労力を台無しにしてたりする人もいるでしょう。また遅れて入ってきて、「ああ、遅れてすみません。交通渋滞に巻き込まれてしまって (テヘペロ」と言うかもしれません。この時に、あなたはどうしますか?交通状況を考慮してあなたたちの時間を尊重してほしいと頼んでいますか?それとも、カジュアルに「ああ、いいですよ。よくあることだから」と気楽に話していますか?次に、頭の中で「...と言うべきだった」という接頭語をつけてシナリオを再実行してみましょう。
あなた自身が自分のためやチームのために立ち上がっていることをチームが目撃していないのであれば、リスクが低いときに、チームが、あなたがより困難なシナリオに立ち向かう能力をどのように予想するのかを想像してみるとよいでしょう。
2. 安全な環境をつくる
お互いの共感を育む
あなたの感情的な雰囲気を少し暖かくする必要がある場合は、親身なスクラムマスターが、そのことに気がつき、すぐに行動を起こすでしょう。スクラムマスターたちは、良い質問をしたり、良い関係を築いたり、笑いをとったり、チームがイベントに集中できるようにする方法を知っています。
あなたが、自然と感情移入できる人でなかったとしても、それは問題ではありません。共感とは、チームのメンバーとのというよりは、むしろあなた自身とのことなのです。チームがあなたに逆らうのではなく、あなたと共に仕事をしたいと思っているかどうかは、あなたが共感できるリーダーになったときにことわかるでしょう。
共感(empathy)と同情(sympathy)を混同しないでください。共感とは、思慮深く耳を傾け、理解する能力のことです。共感は、積極的に行うことができます。指揮統制(コマンド&コントロール)しているのならば、不満がでてくるかもしれません。これを言葉のニュアンスを改善する機会として利用してみてください。多くの場合、特に人が動揺している場合、これらの言葉のニュアンスとは、あなたが言っていることではなくて、その人が聞いたことなのです。
20分間でできるチームエクササイズ(20-minute team exercise)をブックマークしておいてください。このエクササイズは、チーム自身や、チームメイトについて学ぶことでチームとしての EQ を高めることを手助けしてくれます。チームが協働作業を行っていたとしても、立ち止まって内省することと、個人レベルで適応することはとても良いアイデアです。
訳注: 紹介しているチームエクササイズは、20分、30分、45分でできるものが記載されています。英語ですが、簡潔ですのでぜひ読んで試してみてください。
チームのストレスを評価する
ストレスは、学習能力を妨げるため、イノベーションや問題解決の能力を阻害してしまいます。チームメンバーがストレスを受けていると、ネガティブな感情が表れてきます。実際にチームは、解決策を探すのを止めることができますし、イベントへの参加を自体することもできるのです。離脱行動には注意してください。
コラボレーションと対話型エクササイズの参加を促す
「最悪の事態とは、間違っていること(the worst you can be is wrong.)」という言葉を聞いたことがありますか? www.tastycupcakes.org にあるさまざまなゲームや対話セッションをチームと共有したり、これらについて話をすることができます。
オープンエンドの質問を学ぶ
人が動揺しているときには、「なぜ動揺しているのですか?」と尋ねるのはやめましょう。これでは単に動揺を強めてしまいます。次のような聞き方を試してみてください。
- 「なぜこんなことになったのですか?」
- 「あなたがチームに戻ってイベントに参加できるように、この件を解決するために私にできることはなんですか?」
直接的で、場合によっては押し付けがましい言い回しである「何を考えているのですか?」を次のニュアンスに置き換える練習をしましょう:
- 「これについてどう思いますか?ぜひ意見を聞かせてくださいね」
- 「私の考えを話してから、あなたの考えを聞いてもいいですか?」
人は、要請よりも依頼の方がよりオープンに反応します。言語の微妙なニュアンスは、調子をより強調的に感じさせるのに役に立ちます。オープンエンドの質問で EQ を高める方法として私が気になっているのは、『Coaching Questions』(Tony Stoltzfus)です。各章には、友人と練習ができるシナリオがあります。また、参加者とさまざまな成果が出せるテクニックが盛り込まれています。これは一部の人にとっては当然のことですが、定期的な練習が必要な人(私自身も含みます)にとっては、スキルとして学ぶことができます。
3. 8秒間待つ!
科学者によると、人間の注意力の持続時間とは非常に短いそうです。金魚は私たちよりも長い時間注意を払うことができるのです。
カナダの調査結果によると、人間の注意持続時間の平均は、2000年は、12秒でしたが、8秒に低下したとのことです(2000年はスマートフォンの普及し始めた頃です)。
金魚は、9秒間も集中できます。
しかしながら、ほとんどのファシリテーターは、人々に考える時間を与えていないだけなのです。ファシリテーターは質問をして答えを求めます。あなたの仕事は、そこに飛び込みたい誘惑に抵抗することなのです。「私は話をしなければならない」から「話を聞かせて」に脳をスイッチを切り替えてみてください。
チームに、考えて理解する時間を8秒間与えてみてください。より良い方法は、問題を解決する時間も与えることです。「2分後にまた戻ってきます」と言いましょう。
ここで一旦立ち止まって、次にファシリテートするときのためのプロンプトとしてこれを書き留めてください:
・それを言う必要はありますか?
・今すぐそれを言う必要がありますか?
・今、私がそれを言う必要がありますか?
この3つのフレーズを息をする合間に話すには8秒はかかります。あなたはどれくらいの時間がかかりますか?
まとめ
プラクティス!
- シナリオを1つ書き出しておき、それが次にでてくるときに快適に提供できるように練習しておく
- 一旦立ち止まり、何らかの形であなたとの関係がなくなってしまいそうなチームメンバーを3人書き留めてみる
- 彼らと協力して手助けできることを示せる3つのアイデアを書き留めてみる
この記事は誰も変えようとしていません。個人やチームにとってより効果的な振る舞いやコミュニケーション方法を模索する手助けとしたいのです。EQ を改善しようとする自分の弱さと意志を示せば、他の人もそうするでしょう。チームの全員がイノベーションを促進する安全な環境づくりとして投資されるべきです。
この3つのヒントを読んでみて違う意見はありませんか?8秒待つことでチームの雰囲気(感情風土)はどう変わりましたか?とても興味があります。
Julee Everett より
真実を語り、技術を磨き、感謝の気持ちを表しましょう
本記事の翻訳者:
長沢 智治 - アジャイルストラテジスト
サーバントワークス株式会社 代表取締役。Helpfeel Inc. アドバイザリーボード。DASA アンバサダー/認定トレーナー。
『More Effective Agile』、『Adaptive Code』、『今すぐ実践!カンバンによるアジャイルプロジェクトマネジメント』、『アジャイルソフトウェアエンジアリング』など監訳書多数。『Keynoteで魅せる「伝わる」プレゼンテーションテクニック』著者。
Regional Scrum Gathering Tokyo 2017, DevOpsDays Tokyo 2017, Developers Summit 2013 summer 基調講演。スクー講師。