本記事は、Barry Overeem さんによる「A Guide To Study The Underlying Research Of Columinity」の翻訳です。翻訳・公開は、Barry さんの許諾を得ています。誤字脱字・誤訳などありましたらぜひご指摘ください。
はじめに
学術研究を学び、ツールを探り、始めるために必要なあらゆることをを学びましょう。
最新の学術研究に基づいたColuminity(旧Scrum Team Survey)は、チームが最も重要な部分を改善するための先駆けとなるツールです。これは、継続的な改善をするためのエビデンスに基づいた手引きといえます。複数のレベルでパフォーマンスのパターンを明らかにし、前に進めていくための方法を示します。
Columinity を最大限に活用するための5つのステップを定義しました。
- 研究を学ぶ
- 原則を探る
- キックオフをファシリテートする< translating now!
- 結果を検査する
- 戦略を策定する
すべての皆さんが、上記のステップに沿うことを強く推奨します。上記ステップはツールの適切な利用機会を劇的に増加させてくれるものです。
この記事では、ステップ#1の「Columinityの研究の基礎を学ぶ」についての解説になっています。また、Columinityのインターフェイスを通じてワークショップのテンプレートとして用いることもできます。もっとよく知りたい場合は、いつでも連絡してください。
論文「アジャイルとスクラムチームの効果性の理論」
"A Theory Of Agile & Scrum Team Effectiveness"
意見は簡単ですが、事実はそう簡単ではありません。だからこそ、アンケートとチームの効果性のモデルは学術研究に基づいたものになっています。
アジャイルチームをより効果的にするにはどうしたいいでしょうか。意見をみつけるののは簡単ですが、エビデンスに基づいた推奨事項を見つけるのはよりチャレンジングなことです。残念ながら、この分野の学術研究はまだ限られたものになっています。そこで、学者、統計学者、心理学者と共にこの研究を実施しているのです。確実な知識に役立てるために、査読済みの結果とデータを科学ジャーナルを通じて発表しました。
このポスターは、学術研究から得た最も重要でインパクトのあるインサイトをまとめてものになっています。
7年間にわたり、5,000を超えるアジャイルチームのケーススタディとデータ収集を行いました。アジャイルチームの効果性に関する科学的なモデルを漸進的に開発しました。そして、Daniel Russo教授とともに、学術誌「Transactions on Software Engineering and Methodology(TOSEM)」に査読済みの学術論文を発表しました。
私たちが発見したこと:
- 効果的なチームの75%は、「反応性」、「ステークホルダーへの関心」、「継続的改善」、「チームの自律性」、「マネジメントの支援」の5つの中核となる要因から予測が可能である。それらは13の副次要因を持ち合わせる
- チームはステークホルダーのニーズに反応し、集中することでより効果的にチカラを発揮する
- 継続的改善の風土、チームの高い自律性、マネジメントからの明確な支援が、効果的なアジャイルチームの協力な基礎を作り上げる
この研究は、Columinityのデータを用いて行われました。学術論文はこちらから読むことができます。非技術的な要約も公開しています。
このポスターは、チームの効果性を決定づける要因と副次要因です。
このモデルは、アジャイルチームの評価と診断、そして支援に関する方向性を示しています。また、チームのどの分野がよく育成できていて、どの分野を機能させるかを示してもいます。このモデルは、多くの選択肢、方法、アプローチがある中で、焦点を提示するものになっています。データを用いて、何を改善すべきかについてエビデンスに基づいた提案に用いることができます。
その他の学術論文
Cokuminityのデータに基づいて、以下の学術論文が執筆されています。Columinityの利用には必要ではありませんが、特定の分野を改善することがなぜ重要なのかを理解するのに役立ちます。
多様性はチームの効果性にどのようなインパクトを与えるか
この査読済みの研究は、Aalborg大学のDaniel Russo教授と協働で行われました。ACMのとても影響力のあるジャーナル「Transactions on Software Engineering(TSE)」に掲載される予定です。
- 多様性がチームの効果性に及ぼす影響は複雑である。年練による多様性はわずかながら肯定的に働き、性別の多様性は対立をわずかに増加させる。役割や文化的な背景の多様性は重要ではない。
- 多様性のあるチームは、より多くの認知的なリソースを持つが、その代償として多様性に沿った対立が多くなる(可能性がある)。
- カテゴリー化と凝集性モデル(CEM: Cetegorization-Elaboration Model)は、多様性がチームにとって肯定的にも否定的に作用する。諸刃の剣であることを概念的に理解する非常に優れた方法であるCEMは、多様性がチームにとって肯定的にも否定的にもなる。また、否定的な影響に対する緩衝策を理解するためにも役にたつ
- 心理的安全性は多様性の効果を緩和しなかった。しかしながら、チームの効果性を強く予測できた
この研究はColuminityのデータを用いて行われました。学術論文はこちらです。非技術的な要約も公開しています。
研究ロードマップ
- 査読済み論文「Do Agile Scaling Approaches Make A Difference? An Empirical Comparison of Team Effectiveness Across Popular Scaling Approaches」を公開した
- アジャイルコミュニティにおける心理的安全性に関する研究結果を公開した
- チーム編成戦略と安定性がチームの効果性にどのような影響を与えるかについての研究は、現在データを収集している
- アジャイルチームの効果性に関するモデルに、よりアウトカム指向の計測指標を含めるための研究を行っており、プロダクトライフサイクルマネジメントのような、よりソフトウェア指向の要素も含めたいと考えている
ニュースレターを購読することで、現在進行中の学術研究の最新情報を得ることができます。結果や論文の発表、新しい研究への取り組みについても公開していきます。
ツールを用いたチームの探究
研究を調べた後の次のステップとしてツールをチェックし、学術論文がどのように統合されているかをみてみてください。
デモ環境にアクセスして、チームレポートを表示してみてください。1つのチームのインサイト、ヒント、アクションの例を見ていただくことができます。また、チームダッシュボードを読み取り専用で見る環境も見てみてください。このダッシュボードをクリックすることで、作業の流れを確認することができます。チームダッシュボードは、複数チームでColuminityを使う組織のために作成したものです。
最後に、コーチングセンターをチェックしてください。複数の組織や1つの組織内のチームクラスターをサポートすることができます。
デモ環境にはこちらからアクセスできます。
このツールの機能についてより詳しく知りたい方は、「A Guide On How To Improve Your Team With Columinity」という記事で、主要機能の簡単なツアーと、初めての体験を楽しみながら、面白く、生産的にするためのファシリテーションガイドを読むことができます。
推奨事項: 共に研究を探究する
自分ひとりで、あるいはチームや支援者やステークホルダーと一緒に、この研究について探究してみましょう。その際に、リベレイティングストラクチャーの「カンバーセーションカフェ(訳註: 日本語による解説はこちらが詳細に書かれています)」の利用を検討してみてください。カンバセーションカフェでは、共有された深刻なテーマや課題に対して、自分の意見を通そうとするのではなく、お互いの考え方に耳を傾け、理解しあうことを促すことができます。
研究についての考察を促す機会:
学術論文から学ぶとき、個人的に何が目につきますか。
何に焦点を当てることがが重要そうですか。
自分の組織とどう関係がありそうですか。
要因についての考察を促す機会:
アジャイルチームやスクラムチームの効果性を決定づける要因を研究から、自身の体験に基づいて最も意味があり、インパクトがあると思う要因はどれですか。
それはなぜ意味があり、インパクトがある要因だと思うのですか。
これらの要因について、どのような個人的な体験を共有できそうですか。
終わりに: 何が自身を支えているか
経験から、チームの継続的な改善を推進することが如何に難しいか、私たちはよく理解しています。改善すべき点は少なくありませんが、何が最もインパクトがあるでしょうか。Columinityは、皆さんや皆さんのチームにとって、これらをより簡潔にするために構築しました個別のチーム向けは無料で提供しています。まずは試してみてください。
本記事の翻訳者:
長沢 智治 - アジャイルストラテジスト
サーバントワークス株式会社 代表取締役。Helpfeel Inc. アドバイザリーボード。DASA アンバサダー/認定トレーナー。
『More Effective Agile』、『Adaptive Code』、『今すぐ実践!カンバンによるアジャイルプロジェクトマネジメント』、『アジャイルソフトウェアエンジアリング』など監訳書多数。『Keynoteで魅せる「伝わる」プレゼンテーションテクニック』著者。
Regional Scrum Gathering Tokyo 2017, DevOpsDays Tokyo 2017, Developers Summit 2013 summer 基調講演。スクー講師。