PDCAではなくPDSA
PDCAについては、ほとんど知らない方はいないでしょう。
計画(Plan) ー 実行(Do) ー 評価(Check) ー 改善(Act)
「PDCAを回そう」とかよく言うアレです。
デミング氏が考案したとされていますが、諸説あります。しかし、デミング氏が晩年にPDCAの「C」を「S」に見直したことはあまり知られていないのかもしれません。
「S」とは、Studyのことで、日本語では「研究」「学習」と訳されます。
すなわち、以下のサイクルになるのです。
計画(Plan) ー 実行(Do) ー 学習(Study) ー 改善(Act)
また、「A」についてもActからAjust(調整)やAdapt(適応)という捉え方もありますが、今回は「C」から「S」にフォーカスします。
PDCAとPDSAの違い
ここからは特に私の捉え方、実践の仕方について述べていきます。
そもそもこの2つの違いは単なる言葉遊びではありません。「C」を「S」に変えただけではそこに意義はほとんどないからです。
例えば、このサイクルを同じ間隔・期間で回していたとしたら、そこに「評価」から「学習」に転換した効果はほとんどないでしょう。また、サイクルを監督する人と実践する人が別であることも多いPDCAをそのままに、PDSAを回すことに果たしてどれだけの「学習」が得られるのでしょうか。
この言葉遊びを止めるには、置かれている状況、活用する状況を見極めて使うのがよさそうです。
そこで提案したい見方が以下です。
PDSAは、学習するために行う
すなわち、「学習するために」計画し、「学習したことを」実行し、「ここでわかったことから」学習し、「学習したことによって」もしくは、「より学習できるために」改善する、というサイクルと捉えるということです。
すると、おのずと学習したいサイクルの期間、誰のために誰が行うサイクルかがはっきりしてくるはずです。
アジャイルのカタはPDSA
さて、「アジャイルのカタ」では、このPDSAを回していきます。大まかな方向性を定め、現状を把握し、現状から大まかな方向性に向かい近位の目標を立てます。この近位の目標に対して「実験」を繰り返すことで「何がわからないのかは、わかるまでわからない」を体現していくのがPDSAです。
「トヨタのカタ」でもこの捉え方は同様ですが、「実験」のサイクルはPDCAです。これは扱う問題領域の違いが大きいと理解しています。トヨタのカタでは、生産の現場など主要なフローは明確なことが多いです。その中でも不確実な部分や常に改善する必要性があるため、PDCAを回すのです。
先に述べたアプローチは「改善のカタ」として知られているものですが、「トヨタのカタ」と「アジャイルのカタ」にはこのあたりに差異があるのです。
話を戻して、「アジャイルのカタ」での実験をPDSAで回すことで、必要な学習時間(T2L: Time to Learn)で目標に向かう「実験」が行えるようになります。この利点は「実験」にだけあるわけではなく、この適切な学びは、目標や方向性の検査、そして適応(要するに現状似合ってなければ見直す)を駆動させていけるのです。
「アジャイルのカタは、」という文脈は、アジャイル全般に対して、もっというと複雑な問題に対して全般的に当てはまることでもあります。ぜひみなさんのチーム、プロダクト、組織で議論していただきたいです。
アジャイルのカタを学べる研修
「アジャイルのカタ」として、その中でPDSAを学べる認定研修を実施しています。
Agile Kata Pro 認定研修は、一社研修(プライベート研修)や認定研修と伴走支援を組み合わせた Agile Kata Pro Dojoも提供しています。これらは、Agile Kata Professional®️ が定めたカリキュラムをAgile Kata Pro認定トレーナーが実施するものです。
本記事の執筆者:

長沢 智治 - アジャイルストラテジスト
- サーバントワークス株式会社 代表取締役
- Agile Kata Pro 認定トレーナー
- DASA 認定トレーナー
認定トレーナー



認定試験合格

















『プロフェッショナルアジャイルリーダー』、『More Effective Agile』、『Adaptive Code』、『今すぐ実践!カンバンによるアジャイルプロジェクトマネジメント』、『アジャイルソフトウェアエンジアリング』など監訳書多数。『Keynoteで魅せる「伝わる」プレゼンテーションテクニック』著者。
Regional Scrum Gathering Tokyo 2017, DevOpsDays Tokyo 2017, Developers Summit 2013 summer 基調講演。スクー講師。