PMDOI

PMDOI は、2005年に著名な方々によって考案された「プロジェクトマネジメントの相互依存宣言」です。これは「アジャイルプロジェクトマネジメント宣言」 (APM) とも呼ばれています。

原典

内容については、とても簡潔にまとめられており、ウェブサイトで公開されていました。

pmdoi.org

残念ながら数年前よりこのサイトにはアクセスができなくなっており、原文を見ることができなくなっています。わたしは、この宣言に感銘を受けており、内容を見返せるようにスナップショットを取得しております。また、講演などでも引用をさせていただくため、自分の理解として訳したものをご紹介させていただいております。

私は、仕事柄からアジャイルについて開発チームに対する説明だけではなく経営陣やマネージメント層に対して説明する機会が多いため、この宣言を引用させていただくことが多いです。こちらを紹介することで、アジャイルに対する誤った印象や偏見がある程度は払拭できています。

自己理解に基づく翻訳

ここでは、自己理解に基づき意訳したものを記載させていただきます。なお、誤りなどありましたらぜひご指摘をお願いいたします。

pmdoi

相互依存宣言 – Declaration of Interdependence

アジャイルや適応型のアプローチは、人とプロジェクトと価値をつなげる
私たちは、結果を出しているプロジェクトリーダーのコミュニティです。成果を達成するために以下の事柄を挙げます:

私たちは、

  • 継続的な価値の流れを重視することにより、費用対効果を高めます
  • 顧客との頻繁なやりとりとオーナーシップの共有することで、信頼できる結果を提供します
  • 不確実性を予測し、繰り返しと予測と適応により不確実性を管理します
  • 個人が価値の源泉であることを認識し、違いを産むことができる環境創りにより、創造性と革新を引き出します
  • チームの成果の説明責任と責務の共有により、パフォーマンスを上げていきます
  • 状況に応じた戦略、プロセス、プラクティスを通して、効果性と信頼性を改善します

©2005 David Anderson, Sanjiv Augustine, Christopher Avery, Alistair Cockburn, Mike Cohn, Doug DeCarlo, Donna Fitzgerald, Jim Highsmith, Ole Jepsen, Lowell Lindstrom, Todd Little, Kent McDonald, Pollyanna Pixton, Preston Smith and Robert Wysocki.

タイトルの「相互依存宣言」には複数の意味合いがあります。プロジェクトチームのメンバーは、つながりのない個人の集団ではなく、相互に依存する全体の一部です。また、プロジェクトチームと顧客、および利害関係者も相互に依存しています。その相互依存な関係を認識できていないプロジェクトチームが成功することはほとんどありません。

上記に挙げた価値観も相互に依存するものです。それぞれも他の価値観から独立していても重要ですが、6つの価値観は、現代的な見方を示す価値体系として形成されます。特に複雑で不確実なプロジェクトの管理では有効です。

6つの宣言は、「価値」、「不確実性」、「顧客」、「個人」、「チーム」、そして「コンテキスト」を示していて、分離できない全体感を定義しています。例えば以下のような事柄が挙げられます。価値を評価する顧客がいなければ、価値を提供することは難しいと言えます。個々の貢献を認めずに実行可能なチームでいることは難しいと言えます。状況にあった戦略を取らずに不確実性を管理することは難しいと言えます。

6つの価値観を示す宣言は、明確な形式があります。つまり、アイテムが重要である理由は価値観の説明に先行します。「費用対効果を高める」は、継続的な価値の流れにフォーカスすることにとって重要な理由となります。価値観の宣言は、信頼できる成果を提供し、不確実性を管理し、創造性と革新を引き出し、パフォーマンスを上げ、効果を改善するための重要性を強調しているのです。

各々の宣言は、このグループが現代のプロジェクト管理のもっとも重要な局面として考えているものを伝えています。また、各々の宣言は、プロジェクト管理におけるアジャイルな適応スタイルによる差別化を試みようとしています。たとえば、最後の宣言にある「状況に応じた戦略、プロセス、プラクティス」というフレーズは、戦略、プロセス、プラクティスについて過剰に標準化や固定化するべきではなく、プロジェクトやチームのニーズに合わせて動的にする必要があることを示しています。他のスタイルのプロジェクト管理では、標準化と規範的なプロセスが遂行されやすいです。

もしあなた方がこの組織についての情報に関心があるならば、私たちのウェブサイトや、 www.groups.yahoo.com/group/agileprojectmanagement ディスカッションに参加してみてください。


※ 訳注: ウェブサイトは閲覧できず、ディスカッションは他の URL へリダイレクトされているようです

Jim Highsmith, 2005年2月17日

本記事の翻訳者:

長沢智治

長沢 智治 - アジャイルストラテジスト

サーバントワークス株式会社 代表取締役。Helpfeel Inc. アドバイザリーボード。DASA アンバサダー/認定トレーナー。

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認定スクラムマスター
DASA Accredited DevOps Trainer
DASAアンバサダー

『More Effective Agile』、『Adaptive Code』、『今すぐ実践!カンバンによるアジャイルプロジェクトマネジメント』、『アジャイルソフトウェアエンジアリング』など監訳書多数。『Keynoteで魅せる「伝わる」プレゼンテーションテクニック』著者。

Regional Scrum Gathering Tokyo 2017, DevOpsDays Tokyo 2017, Developers Summit 2013 summer 基調講演。スクー講師。

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