アジャイルのカタとは

アジャイルのカタ(Agile Kata)は、変化を乗りこなし、個人、チーム、組織全体が適応力を養うための実践的で繰り返し可能なパターンです。これは厳格であったり、規範的であったりするプロセス手法ではなく、目的のある実験を通じて進歩を導く、科学的思考に基づいています。

その中核となるパターンは、課題を定義し、現状を把握し、次の目標を設定し、そこに向かうための実験という4つのステップで構成されています。このリズムを繰り返し続けることで、新しい習慣が生まれ、焦点が明確になり、レジリエンスが養われます。

アジャイルのカタは、作業のやり方を規定するのではなく、チームが共に考え、学ぶ方法を改善するのに役立つものです。

武道に根差した「カタ(型・形)」とは、熟達に至るまでの構造化された反復実践のことです。アジャイルのカタは、この原則を仕事の現場に適用し、新しい習慣を身につけ、共有学習を促し、本当の進歩を推進する実証済みのやり方を提供するものです。

これは、フレームワークや万能なソリューションではありません。むしろ、チームが課題に明確に対処し、エビデンスに基づいて意思決定を行い、実験を通じて改善を行うのに役立つ実証済みのパターンなのです。

業界やチーム構成に問わず、アジャイルのカタは再現性のある結果をもたらします。これにより、人々は意図を持って仕事を行い、自信を持って適応し、一歩ずつ考え方を進化させることができます。これは複雑さではなく、よく実践された習慣のシンプルさによる威力です。

アジャイルのカタは、スクラムやカンバンのようなプロセスフレームワークではありません。役割やフローを定義するものではなく、課題に直面したときの考え方や行動のパターンを刷新するものです。

フレームワークとは構造を提供するものですが、カタは考え方を構築するものです。一貫した実践を通じて、チームは内省、実験、エビデンスに基づく意思決定の習慣を身につけます。チームは承認や規範的な役割を必要とせず、自己組織化し、より効果的に協力し合い、目的を持って適応させることを学びます。考え方を変えることで、チームはより創造的、意図的になり、共有されたオーナーシップを持って仕事を始めることができます。

カタは、フレームワークに取って代わるものではありません。人々がフレームワークを超えて成長するのを手助けするものです。

アジャイルのカタ認定研修の告知

【お知らせ】Agile Kata Pro認定研修

「アジャイルのカタ(Agile Kata)」の認定研修ならびに認定試験が日本でもスタートしました。

  • 日本人の認定トレーナー
  • 日本語の研修コンテンツと座学と演習
  • 自動翻訳で日本語で受験可能な認定試験
  • 日本語サイトの公開
詳しく見る
agilekata.jp

解説

このホワイトペーパー「アジャイルのカタ ver. 2.0」は、「Agile Kata ver. 2.0」の日本語翻訳版です。翻訳は長沢智治が担当させていただき、7名の翻訳レビューを経て、agilekata.orgならびに、agilekata.proに提供し、公開されました(※ 現状については後述)。

このホワイトペーパーでは、アジャイルを実践し定着化するための中核となる「カタ」を提唱しています。アジャイル宣言やその12の原則、スクラムやカンバンといったフレームワーク、アジャイルプラクティスや、アジャイルリーダーシップ、アジャイルコーチングは、一つ一つとっても共感でき、またある種の理想でもあります。しかしながら、従来の習慣や成功体験により、アジャイルを良いものだと認めつつも、従来の考え方ややり方、制約に引きずられ、本来のアジャイルを実践できない現場を多くみてきました。「アジャイルのカタ」は、『トヨタのカタ』で解くほぐされた「改善のカタ」を中核とし、そこにアジャイルの良さであるチーム、変化への適応などを盛り込むことで、アジャイルの導入、実践、定着化を行える「カタ」としています。

Business Agility Report (by Business Agility Institute) によると、75%のアジャイル変革が失敗しているといいます。4回挑んで3回失敗している計算になるため、これだけ見ると困難な道であると言えるでしょう。しかしながら、この壁を突破した組織は、その25%が「市場に出すまでに時間(T2M)」を短縮し、75%が従業員のエンゲージメントが向上し、92%の従業員がアジャイルな働き方を勧めていきたいと言っています。この差を埋めないといけないということでしょう。

この差を埋めるアプローチの根幹として「アジャイルのカタ」が存在しています。

「アジャイルのカタ」はとてもシンプルであり、実績のある方法をベースにしているため、アジャイル導入の開始からでも、中盤でも、終盤でも取り入れることができます。特に、これからアジャイルを加速させたい、あるいは、アジャイルがうまくいっていない現場にこそ、「アジャイルのカタ」は活きるのではないでしょうか。

また、アジャイルへの障壁として、周辺の理解が乏しいケースも見受けられます。ステークホルダーの理解、リーダーシップの理解、組織構造とプロダクト構造の関連への理解などが乏しいケースや、従来の組織の文化、商習慣が障壁となるケースです。「アジャイルのカタ」は、アジャイルトランスフォーメーション、組織的な改善、そしてアジャイルチームやプロダクトチームに適用が可能です。またはこれらすべての視点で「アジャイルのカタ」を取り入れることでアジャイルが加速するといってもいいでしょう。

「アジャイルのカタ」を知り、現場と組織環境、ステークホルダー、ビジネスのアジリティを見つめ直し、それだけでなく、明日といつかの明日を目指した、実践できる「カタ」を身につけましょう。

翻訳者 長沢智治

アジャイルのカタ
アジャイルのカタ

ダウンロード

ホワイトペーパーは、agilekata.org、agilekata.proにて無料でダウンロードいただけます。

agilekata.orgならびに、agilekata.proでのホワイトペーパーの配布は終了しています。Agile Kata ver 3.0 としては書籍として提供され、今後も更新をされていく予定とのことです。本サイトでは、日本語話者のために、許可を得て、Agile Kata ver 2.0 の英語オリジナル版と日本語版を無料閲覧できるようにしています(※参考資料として扱ってください)。最新の内容は、最新版(現在、ver 3.0)も併せて見ることを推奨いたします。アジャイルのカタは、普遍的なパターンですが、常に進化し得るパターンでもあります。

経緯: Agile Kataの構想の元、発表し公開したのがこのホワイトペーパーでした。当初は「ビジネスアジリティ向上」を主目的としていましたが、今ではアジャイルのカタの活用はそれだけにとどまらず、大きな枠組みから小さな日々の改善にまで適用、応用されています。そこで、認定研修や書籍が登場し、その活用が広がっており、このホワイトペーパーのみが拡散されてしまうと、アジャイルのカタが限定的なものになってしまうため、非公開となりました。

日本語版を閲覧する
アジャイルのカタ ver 2.0
英語版を閲覧する
Agile Kata ver 2.0

PDFの提供について

PDFのダウンロードでの提供については個別対応とさせていただきます。ご希望の際は、お手数をおかけいたしますが、下記、お問い合わせフォームよりご連絡ください。ダウンロード可能なURLをお知らせいたします。

認定研修については、日本語の専用サイトをご覧ください。

書籍

Agile Kata – Patterns and PRactices for Transformative Organizational Agility

Joe Krebs,  Addison-Wesley Professional, 2024/12

関連リソース(ドキュメント)

このホワイトペーパーは、改善、科学的思考、複雑適応系、経験的アプローチなど、そして、アジャイル全般に関連しています。

支援サービス

ホワイトペーパーを読んだ上で、「より詳しく理解したい」、「実践の中で身につけたい」といったご要望から、アジャイルコーチ(アジャイルストラテジスト)としての伴走支援、クイックスタートできる研修トレーニングのご要望を多くいただきます。有用だと思われるようでしたら、お気軽にご連絡ください。

翻訳者

長沢智治

認定トレーナー

DASAプロダクトマネジメント認定トレーナー
DASA DevOpsファンダメンタル認定トレーナー

認定試験合格

Professional Scrum with User Experience
PAL-EBM
Professional Scrum with Kanban
Professional Scrum Product Backlog Management Skills
Professional Scrum Facilitation Skills
Professional Product Discovery and Validation
Agile Kata Foundation
DASA Product Management
DASA DevOps Fundamentals

長沢智治

2000年より開発プロセス改善コンサルタントやエバンジェリストとして活動しており、イベントでの基調講演を担当したり、書籍の執筆・監訳や記事の翻訳なども精力的に実施しています。Agile Kata Pro認定トレーナーでもあり、DASA (DevOps Agile Skills Association) の認定トレーナーでもあります。

長沢智治は、いくつもの Scrum.org 認定資格を取得しています。アジャイルリーダーシップの認定資格である PAL-EBM、PAL I は、組織的なアジャイル変革や、プロダクト戦略、ポートフォリオ戦略、ステークホルダーマネジメントなどの知見が認められました。その他、スクラムのスケーリング(SPS)、スクラムでのカンバンの活用(PSK I)、プロダクトオーナーやスクラムマスター(PSPO II, I, PSM II, I)の知見を認められています。また、DASA認定のアンバサダーであり、DASA認定資格試験の認定トレーナーでもあります。