翻訳記事

本記事は、Matthew Hodgson による「Using OKRs with Scrum and Evidence Based Management」の翻訳です。翻訳・公開は、Matthewさんの許諾を得ています。誤字脱字・誤訳などありましたらぜひご指摘ください。

メモ

この記事はOKRを不確実なビジネスで実践するときに、EBMとスクラムを活用するとという記事であり、経験主義でマネジメントと実践をしましょうねというものです。プロダクト開発でのスクラムのプロダクトゴールの話ではないのでそこ気をつけてください。(翻訳者より)

はじめに

OKRは、目標を設定するための優れたフレームワークです。質の高い目標の設定、目標の明確化、そして自己管理は、チームのパフォーマンスに前向きな影響を与えます[3]。これにより、生産性が向上し、特にバーチャルチームにおいては、アウトカム(成果)に対する認識に大きな影響を与えます[2]。スクラムフレームワークとEBM(エビデンスベースドマネジメント)フレームワークの価値に基づく計測指標を共に用いると、変革の課題に対応するために、企業が取り組みを検査し適応させる能力が、スクラムの経験主義に支えられたOKRによって推進させる関連性とアウトカム(成果)の両方を向上させます。

EBMを用いたOKRの活用

EBMの価値に基づく計測指標[1]は、OKRの目標(Objectives)が特定の事業、ステークホルダー、顧客のアウトカム(成果)を生み出すかどうかを明確にするためのフレームワークを提供するものです。

  • 現在の価値提供を改善することや、満たされていないニーズを提供することにより、顧客満足度のギャップが縮小する
  • 価値提供までの時間をイノベーションや改善するために内的な能力を育てる

重要なこととしては、EBMが価値に基づく計測指標を提供し、経営陣が以下のようなトラップを避けるために、重要価値領域(KVA: Key Value Areas)を用いることです。

  • 計測指標を、提供のマイルストーンに委ねる
  • タスクと活動に基づく計測指標を用いる

ORKとEBMを組み合わせると、経営陣から個人へのタスクに基づく目標のウォーターフォール伝達を回避する経験的なプラクティスが展開されます。経営陣は、計測可能で具体的なインパクトを持ち、ステークホルダーとチームの両方にとってパフォーマンス向上につながるような明確で、現実的で、大胆な目標をチームに提供することが重要であることを再認識しています。

エビデンスベースドマネジメント(EBM)を用いたアジャイルなORKs
エビデンスベースドマネジメント(EBM)を用いたアジャイルなORK

OKRをスクラムの検査と適応のリズムに組み込む

スプリントレビューを発展させ、OKRの指標を検査する

スクラムが持つプロダクトインクリメントごとの実際の進捗状況を検査し、適応していく能力は、ウォーターフォールの予測的で大規模な一括計画と実行モデルよりも優れたオペレーションモデルを支えています。OKRを検査と適応のプロセスに組み込めば、スプリントレビューでは、成果指標(Key Results)の領域の変化、すなわち以下のようなEBMの計測指標を評価し、OKRの目標へのステップを検査するユニークな機会となるのです。

  • アイデアからそれを市場に提供するまでのリードタイム
  • 顧客センチメント(NPS: ネットプロモータースコアなど)
  • 従業一人あたりの収益
  • 顧客使用指標

取り組みや仮説を適応させる

スプリントレビューでは、特定の取り組みがORKの目標に向かって進展していないことを示す計測指標を示している場合、経営陣に以下の機会を提供します。

  • 既存の取り組みを継続する: おそらく、計測指標は遅行指標であり、何かを決定するには時期尚早である
  • 取り組みの一部を継続する価値があるか
  • 取り組みの一部を止めるのか
  • 代替の取り組みを検討する: 他の解決策やアプローチはないか

スプリントレビューで、ステークホルダーを巻き込むことで、特に予算やロードマップの達成度合いなど、取り組み全体の一部を変更した場合の影響を議論し、次のスプリントですぐに実行を適応するためのフィードバックループを構築します。

EBMの重要価値領域ごとに計測指標を適応させる

計測するものを適切に選択できたかどうかをどのように判断するのでしょうか。複雑な環境では、ほとんどの仮説は実験であり、起きそうな期待の概要を示すものです。しかし、それは必ずしも起こるとは限らないのです。計測指標に変化がないとき、その理由を以下かもしれません。

  • 計測指標が遅行指標であり、この取り組みがステークホルダーや顧客に何らかの影響やアウトカム(成果)をもたらすまでには、ある程度の時間がかかるのだろう
  • 計測指標は影響を受けているのだが、それを計測できていない

また、取り組みがもたらしている影響について、あまり完全に把握ができていないのかもしれません。OKRの目標がどのように実現されているかを完全に理解するためには、より広範な計測指標が必要なのかもしれません。スプリントレビューで計測指標を検査するにか、以下を考慮します。

  • 計測指標は何を伝えてくれているか
  • 計測指標は十分に包括的か
  • 計測指標を測りすぎていないか
    すべての計測指標を計測すると「木を見て森を見ず」になってしまうかもしれない
  • 計測指標を追加や削除する必要があるか

EBMを用いたOKRのポスター

EBMを用いたOKRのポスターを無料でダウンロードできます。

最後に

リモートであろうがなかろうが、目標を明確にすることはビジネスアジリティにとって重要です。変革の課題に対応するピボットできるアジャイルチームと、目標を設定する経営陣にとって、EBMを用いたOKRは、実現するために設計された取り組みの具体的な進捗に関して、必要な透明性を付加することができるのです。

Zen Ex Machinaについて

Zen Ex Machinaは、アジャイルトランスフォーメーションを専門とするエンタープライズ企業向けのアジャイルコンサルタント会社です。ミッションは、2025年までに100万人の経営陣とチームのワークライフを向上させることです。Zen Ex Machinaのエンタープライズ企業向けのアプリケーションであるAgile IQは、ビジネスアジリティを評価し、コーチング活動をレポートし、アジャイルな行動や振る舞いの強みを成長させるのに役に立ちます。ダウンロードはこちらから。

参考資料

  1. 「エビデンスベースドマネジメントガイド」Scrum.org (2020)
  2. Forester, G., and Thomas, P. (2007) Importance of goal setting in virtual project teams. Psychological Reports, 100 (1): 270-4.
  3. Van der Hoek1, M., Groeneveld, S. and Kuipers, B. (2018) Goal Setting in Teams: Goal Clarity and Team Performance in the Public Sector. Review of Public Personnel Administration 2018, Vol. 38(4) 472–493.

本記事の翻訳者:

長沢智治

長沢 智治 – アジャイルストラテジスト

  • サーバントワークス株式会社 代表取締役
  • Agile Kata Pro 認定トレーナー
  • DASA 認定トレーナー

認定トレーナー

DASAプロダクトマネジメント認定トレーナー
DASA DevOpsファンダメンタル認定トレーナー

認定試験合格

Professional Scrum with User Experience
PAL-EBM
Professional Scrum with Kanban
Professional Scrum Product Backlog Management Skills
Professional Scrum Facilitation Skills
Professional Product Discovery and Validation
Agile Kata Foundation
DASA Product Management
DASA DevOps Fundamentals

『More Effective Agile』、『Adaptive Code』、『今すぐ実践!カンバンによるアジャイルプロジェクトマネジメント』、『アジャイルソフトウェアエンジアリング』など監訳書多数。『Keynoteで魅せる「伝わる」プレゼンテーションテクニック』著者。

Regional Scrum Gathering Tokyo 2017, DevOpsDays Tokyo 2017, Developers Summit 2013 summer 基調講演。スクー講師。

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