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翻訳記事

本記事は、Barry Overeem さんによる「How To Skillfully Navigate Conflict In Your Scrum Team?」の翻訳です。翻訳・公開は、Barry  さんの許諾を得ています。誤字脱字・誤訳などありましたらぜひご指摘ください。

タスクの対立と関係性の対立

スクラムチーム調査では、タスクと関係する対立について計測しています。タスクの対立は、目の前のタスクに焦点を当て、どのように前進していくかについて異なった意見を含んでいるのです。これらの対立の中心には、あるタスクをどのように実行するか、どのような手順を踏むか、どのように進めていくか、があります。Karen Jehnらによる科学的な研究(2001年)では、タスク関連の対立が適度にあると、(スクラムチームがいつも取り組んでいるような)非定型のタスクの生産性が向上することが示されています。この尺度でみると、おそらくほとんどのチームは、とても低くも、高くもない、中程度のスコアで最もよく成長するでしょう。

訳注: Karen Jehnらの研究文献は、こちらだと思われます

一方、関係性の対立は、人と人との関係やパーソナリティの緊張が中心になります。タスクの対立は他者と一緒に仕事をする上で健全かつ自然なことですが、関係性の対立はチームの生産性を低下させ、安全性を低下させることが研究で明らかになっているのです。関係性の対立は、生産的な仕事からエネルギーを奪うのです。したがって、関係性の対立のスコアが低いならば、直ちに懸念すべき要因となります。特に長期間にわたって一貫してこのスコアが低い場合は要注意です。

ですから、自分のチームがタスクや関係性の対立にどのように対処しているかを頻繁に自問することが重要になります。私たちは、これを把握するために、DIYの(自分たちでできる)ワークショップをいくつか作りました。すべてのワークショップには、それらを用いて適切な方向に向かうためのステップバイステップによるアプローチが含まれています。

以下のワークショップや実験があります。

この記事では、これらのワークショップについて簡潔に紹介します。ぜひ試してみてください。そして、一緒に学び、成長しましょう。

ワークショップの開発にあたり、少額の寄付をお願いしています(5米ドル)。またPatreonで支援(※訳注: 月額制の支援メニューです。サブスクですね)いただけると、デジタルコンテンツを無料でダウンロードできるようになります(この特典は、「Contributor」レベル以降からになりますのでご注意ください)。

タスクの対立は、他者と仕事をする上で健全かつ自然なことだが、関係性の対立はチームの生産性を低下させ、安全性を低下させることが研究により明らかになっている

エクスペリエンスホイールで対立を上手に乗り切る

Navigate Conflict Skillfully With The Experience Wheel

他者と一緒に仕事をする上で、対立は自然なことです。「対立とは何か」と尋ねると、たいていは言い争い、声を張り上げ、ドアのバタン!という音、怒った顔などで表現されます。しかし、私たちの対立のほとんどは、はるかに目に見えにくいものなのです。体験している人たちが明確に表現することはなくても、集団の力関係に影響を及ぼしているものです。そして、集団全体がそのことに気づいているか、あるいは、気づいている人がいるかのどちらかなのです(訳注: 要は誰も気づいていないということはない)。これが、諺の「部屋の中の象(Elephant In The Room)」です。

訳注: 「部屋の中の象(Elephant In The Room)」とは、触れてはいけないタブーな話題などのことを言います

象(対立)を表に出すのは、面倒で難しい仕事ですが、生産的に行えれば、チームの成長と学びという形で報われることになります。ディナーの席(飲みの席)でチームメイトの口をこぼす代わりに、そのエネルギーを問題解決や新しいアイデアに振り向け、仕事以外での元気を取り戻すことができるのです。象(対立)を表に出す方法を学んだチームは、対立(象)から逃げるのではなく、対立(象)と一緒に踊ることができるようになります。

私たちは、エクスペリエンスホイールを用いて、「部屋の中の象」にもっと効果的に対処する方法を学ために、DIYワークショップを作ったのです。観察、感じたこと、ニーズ、仮説を明確に表現することができ、間違った結論に飛びつくのを防ぐことができるようになります。

EXPERIENCE WHEEL
高解像度版の画像は、こちらで入手できる

ピンチ理論で対立の根源を探る

Discover The Roots Of Conflict With Pinch Theory

私たちの脳は、複雑な感情や思考、創造的な解決策を可能にするような驚くべき器官なのです。脳は、現代人の生活の変化にうまく適応していますが、数百万年前に私たちが生き延びるのに役立った資質がまだ多く保たれているのです。

集団の中での安全性を求めるために、私たちの脳は、社会的階層と他者との相互作用の中で何が起こっているのかについて深い感受性を持ちように進化してきたのです。私たちの社会性は、他者から見られたい、話を聞いてもらいたい、集団に属していたい、他者と比べて公平に扱われてたいという強い欲求を生まれながらにして持ち合わせているのです。

表面的な仕事上の対立はともかく、他者との対立のほとんどは、そうした社会的欲求が他者によって(しばしば無意識のうちに)侵害されるところから始まるのです。そしてそこから「ピンチ(些細な問題や迷惑)」が始まります。ピンチが積み重なると、やがてクランチとなり、関係性やパートナーシップあるいは、コラボレーションの終焉を意味するようになります。

私たちは、「Pinch Model for Conflict」(Sherwood & Scherer, 1975)を知ってもらうために、このDIYワークショップを作りました。このワークショップは、対立が時間と共にどのように構築されていくか、そして、役割と期待値を明確にすることがどのように対立を回避するのに役立つのかを理解するのを手助けします。

PINCH THEORY

即興劇で対立に反応する5つのスタイルを遊び心で探る

Use Improv Prototyping To Playfully Explore Five Styles Of Responding To Conflict

集団における対立は、しばしば「見えない象」となります。私たちが想像する対立(つまり声を荒げたり、ドアをバタン!と閉めたりすること)ではなく、対立は、微妙に水面化で行っています。例えば、全員が「自分のほうが貢献している」と感じるチームであったり、また、「ある人が、他者の会話時間をすべて奪っているため、自分の意見が通らない」と感じるなどです。調査によると、軽い対立であっても、メンバーがその対立にどんどん気を取られるようになり、チームの生産性が低下することがわかっているのです。

私たちは、対立のための「Dual Concern Model for conflict(対立の二重関心モデル)」(Pruitt & Rubin, 1986)をあなたのチームに馴染ませるためにこのDIYワークショップを作りました。これは、人々が対立にどのように反応するかについて、5つの一般的なスタイルを提供するものです。私たちはあなたのチームが遊び心を持って異なった様式を探索し、彼らが認識するものを演技し、それに応じて改善するようにするためにリベレーティングストラクチャーの「即興劇(Improv Prototyping)」を用います。

Dual Concern Model for Conflict

高解像度版の画像は、こちらで入手できる

まとめ

私たちは、スクラムチームがタスクと関係性の対立をうまく対処できるようにするために、DIYワークショップを作りました。タスクの対立は、他者と一緒に仕事をする上で健全かつ自然なことですが、関係性の対立は、チームの生産性と安全性を低下させるという研究結果がでています。したがって、すぐにでも行動したいものです。ワークショップを試された方は、その感想をお聞かせください。あなたの考えやアイデア、経験は、私たちにとってかけがえのないものです。一緒にさらに価値のあるコンテンツを作り上げ、世界中のスクラムチームのスーパーパワーを解き放ちましょう!

本記事の翻訳者:

長沢智治

長沢 智治 – アジャイルストラテジスト

  • サーバントワークス株式会社 代表取締役
  • Agile Kata Pro 認定トレーナー
  • DASA 認定トレーナー

認定トレーナー

DASAプロダクトマネジメント認定トレーナー
DASA DevOpsファンダメンタル認定トレーナー

認定試験合格

Professional Scrum with User Experience
PAL-EBM
Professional Scrum with Kanban
Professional Scrum Product Backlog Management Skills
Professional Scrum Facilitation Skills
Professional Product Discovery and Validation
Agile Kata Foundation
DASA Product Management
DASA DevOps Fundamentals

『More Effective Agile』、『Adaptive Code』、『今すぐ実践!カンバンによるアジャイルプロジェクトマネジメント』、『アジャイルソフトウェアエンジアリング』など監訳書多数。『Keynoteで魅せる「伝わる」プレゼンテーションテクニック』著者。

Regional Scrum Gathering Tokyo 2017, DevOpsDays Tokyo 2017, Developers Summit 2013 summer 基調講演。スクー講師。

プロフィール