翻訳

この記事は、Hiren Doshi さんの「The Three Pillars of Empiricism (Scrum)」を翻訳したものです。翻訳は Hiren さんの許諾をいただいています。誤訳、誤字脱字がありましたら、ご指摘ください。

経験主義

「経験主義」とは、事実や経験に基づき、そして根拠(エビデンス)に基づいた方法で仕事をしていくことのことです。スクラムでは、架空の計画ではなく、現実の観察に基づいて進行する経験的なプロセスを実施していきます。またスクラムでは、ビジネスや組織的なアジリティを達成するために、マインドセットや文化的な変化を重要視しています。

経験主義の三本柱

経験主義の3つの柱は、下図のようになります

経験主義の3本柱
経験主義の3本柱

透明性

「透明性」とは、事実をありのままに提示することということになります。顧客や、CEO、メンバー個人など、関係するすべての人が他者との日々のやりとりにおいて透明性を保ちます。

誰もがお互いを信頼していて、良い情報も悪い情報も勇気を持って伝えようとします。誰もが組織の共通の目的のために努力をし、協力し合い、隠し事をしません。

検査

ここでいう「検査」とは、検査官や監査人による検査ではなく、スクラムチームの全員によって行われる検査です。検査は、プロダクト、プロセス、人の側面や、プラクティス、継続的な改善に対して行うことができます。

例えば、チームは貴重なフィードバックを集めるために、各スプリントの終わりにプロダクトをオープンで透明性のある形で、顧客に見せます。検査中において顧客が要求を変更した場合、チームは文句を言うのではなく、これを機会として、顧客と協力して要求を明確にして、新しい仮説を検証することによって、適応します。

適応

ここでいう「適応」とは、継続的な改善のことであり、検査の結果に基づいて適応する能力のことをさします。組織の全員が「昨日よりも良くなっているだろうか?」と定期的に問いかけなければなりません。

利益ベースの組織(訳註: プロフィットセンター)では、価値は利益で表されます。この適応は、最終的にはアジャイルへの適応の理由の一つとなります。例えば、より速く市場に出すことや、価値に基づく提供による投資対効果(ROI)の向上、ソフトウェア品質の向上による総所有コスト(TCO)の削減、顧客や従業員の満足度の向上などが結びついてきます。

まとめ

スクラムがうまく機能するのは、3つの責任と5つのイベント、3つの作成物があるからではありません。スクラムがうまく機能するのは、顧客からのフィードバックを頻繁に収集し、変化を受け入れることで、反復的で、価値に基づいた漸進的な提供を行うという、アジャイルの基本的な原則を守っているからです。

その結果、市場に出すまでの時間が速くなり、デリバリーまでの予測可能性が向上し、顧客対応力も向上し、変化する優先順位を管理するによる方向性を変更する能力がつき、ソフトウェア品質が向上し、リスク管理の改善につながります。

この記事は、著書『Scrum Insights for Practitioners: The Scrum Guide Companion』で取り上げたトピックの1つです。ぜひ読んでみてください。

本記事の翻訳者:

長沢智治

長沢 智治 – アジャイルストラテジスト

  • サーバントワークス株式会社 代表取締役
  • Agile Kata Pro 認定トレーナー
  • DASA 認定トレーナー

認定トレーナー

DASAプロダクトマネジメント認定トレーナー
DASA DevOpsファンダメンタル認定トレーナー

認定試験合格

Professional Scrum with User Experience
PAL-EBM
Professional Scrum with Kanban
Professional Scrum Product Backlog Management Skills
Professional Scrum Facilitation Skills
Professional Product Discovery and Validation
Agile Kata Foundation
DASA Product Management
DASA DevOps Fundamentals

『More Effective Agile』、『Adaptive Code』、『今すぐ実践!カンバンによるアジャイルプロジェクトマネジメント』、『アジャイルソフトウェアエンジアリング』など監訳書多数。『Keynoteで魅せる「伝わる」プレゼンテーションテクニック』著者。

Regional Scrum Gathering Tokyo 2017, DevOpsDays Tokyo 2017, Developers Summit 2013 summer 基調講演。スクー講師。

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